さて、以前photogenicST180のネックをAria pro2 VP-450のボディに移植しますたが、今回はESP LTD F100FMのボディにB.C.Rich Warlock Oneのネックを移植してみたという話です。
いやはや、結構面倒でした。
本題に入る前に、おっさんが身をもって味わった苦行を元にしたネック交換/移植のチェックポイントをまとめておこうと思います。
ネック交換のチェックポイント
スケールとフレット数が整合しているか
ネックとボディのスケールやフレット数が異なっていると、ブリッジの位置を変えたり、ネックの尻を削ったり、ネックポケットを加工しないといけなくなる。
以下はスケールによるブリッジからナットまでの長さの違い。※数値はざっくりです。
- ロングスケール(レギュラースケール、フェンダースケール)は、25 1/2インチ(648mm)
- ミディアムスケールは、24 3/4インチ(629mm)
- ショートスケールは、24インチ(610mm)
スケールが合ってもフレット数が合わない場合
この場合は、長さが短くなったり長くなりすぎたりで、チューニングが合わなくなる。例えば、24フレットのネックを22フレットのボディにセットしようとすると、ネックが長すぎることになります。直すのはとても大変。
ネックのお尻とネックポケットの形状は整合するか
ネックのお尻は緩やかなカーブになっていることもあるし、一直線で角だけ丸められている形になっていることもある。当然、ネックをセットするネックポケットも同様に加工されている。形状が合わないと、取り付けた時にブリッジとナット間の距離が合わないことも往々にして起こりうる。
ネックポケットの幅とネックの幅が整合するか
幅が違う場合、ネックとボディの中央が揃うようにボルトの穴を開けなおしたり、ネックやネックポケットを加工しなければいけないので大変。
ネックの高さとネックポケットの深さが整合するか
ネックの位置が低くなりすぎると弦高が高くなるし、高すぎると、ビビってしまう。ブリッジの高さで調整できるけど限界があるからね。
角度:設置した時に中央線に沿って真っ直ぐになるか
しっかりと中央線に沿って設置されないとセンターずれが起き、1弦が弦落ちすることになる。比較的修正は簡単だが、本当に起こりがちな問題です。安ギターではお馴染みの不具合ですねw
角度:設置した時に水平になるか
ネックポケットを横から見た場合、斜めに角度を付けているボディがあるので、要注意。調達してきたネックをそのままポン付けするとギターとネックが水平にならず、ハイフレットがビビるので、弦高を劇高にせざるを得なくなり、悲しすぎる事態となる。シムを仕込んでもいいのだろうが、対処療法なので気分は良くない。
さて、このチェックポイントを踏まえて、今回の移植作業を振り返ってみる。
ESP LTD F100FMのボディにB.C.Rich Warlock Oneのネックを移植する
まずは、12フレットからブリッジの距離を測る。今回はロングスケールのギターなので、324mmにならなければいけないのだが・・・。
うーん。330mmになっていますね。ブリッジのコマを動かしても修正不能なレベルでございます。しかも、このボディはブリッジが斜めに取り付けられているので、6弦になるともっと距離が広がるという最悪な状況である。
何でだー?ということでネックポケットを見てみると・・・。
あらら、やっぱりね。
ネックのお尻の形状とネックポケットの形状が合いませんな。5mmくらい合ってなさそうだ。
削るしか無いか~。今回は、ネックを削ることにしまつ。
メモ用紙を使ってネックポケットの形をトレースし、ネックに当てています。
同時に、ボルトの穴を埋めてしまおう。3mmの丸棒だと細すぎ、4mmの丸棒だと太すぎたので、サンドペーパーで4mmの丸棒を3.5mm位に細くしてぶち込みますた。
こんな感じでボルトの穴が埋まったので、切り取る部分に鉛筆で印を付け、加工に入ります。
そして、ポケットノコギリとサンドペーパー60、120、平たい棒ヤスリを使ってガシガシと加工した結果が以下です。半日くらいかかってしまった。
これでいけるかなと思って測ったが、長さがまだ合いませぬ。
その後、地道な作業を続け、ようやく終了しますた。2日くらいかかってしもうたバイ。
お次は、ボルトの穴を開けます。まずネックをボディにセットしてクランプで固定し、ネックポケットの背面からボルト穴にドリルを突っ込んでネックに穴を開けます。
指板に傷が付かないように木を挟んでいる。
うむ。3mmじゃ穴が狭すぎた。無理矢理ビスをねじ込もうとしたら思い切りネジ山をなめてしまいますた。結局4mmでドリルし直す羽目になりますた。
ここで、問題発生。ネックをボディにセットした状態で横からみるとネックとボディが水平にならぬ。これは、もしや・・・。
はいキター。ネックポケットに角度が付いてます。左端と右端だと1mmくらいの差がありまつ。Warlock Oneのネックは角度がないので、今後の新しいネックを調達してきた場合、角度が付いていない可能性が高いことを考えて、ネックポケットを加工することにする。
ちゃんとした工具を揃えて、本格的にやります。
うおおお。面倒だったわい。定規で測りつつ、実際にネックとボディを何度も合わせて、ようやくネックポケットの加工が終了しますた。
彫刻刀と棒ヤスリを使ってなんとか平面を出せますた。
さて、早速ネックとボディを取り付けるが、直でビスをねじ込むとネックを貫通しかねないので、ブッシュを調達しますた。ちなみに、GuitarWorksでないと直径14mmの丁度いいものが買えなかった。amazonだと15mmの中華製が4分の1程度の値段で買えたりするんだが、また加工する手間を考えるとね・・・。
で、接合終了。
だがしかし・・・これでも終わらないのがネック移植の難しいところ。
盛大にセンターズレ乙なのでありました。1弦が落ちそうだ・・・。弦を張らないと分からないので、最後の最後に鬱展開になるんだよなあ。
うおおおおおおお。面倒だが仕方ない、ネックポケットを追加で加工します。側面をヤスリで削ります。
削っては、ネックをセットし、弦を張り、センターズレの具合を確かめる。他に簡単な方法はないのかなあ?と疑問に思うが、仕方ない。ここらへんの手間は安ギター製造では省かれているんだろうね。そうでなければ、センターズレが当たり前なんて事態にはなりませんわな。photogenicは大丈夫だったけどね。
とはいえ、ボルト穴を開けなおさなくても調整可能だったので、九死に一生を得たって感じです。
ということで、再びネックをセット。パーフェクトな感じではないのだけど、弦落ちはなさそうなのでOKですかね。
完成です。
まとめ
いやしかし面倒でしたね。ネックのお尻を削って長さを調整し、ネックポケットの角度を無くして、ネックとボディを垂直にし、ネックポケットの側面を削ってセンターズレを直し・・。
力技でネック移植をやるおっさんも悪いんだけどw本当に疲れるわw
お次は、ピックアップを入れて最終チェックですね。
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