前回の記事Aliexpressでローステッドメイプルのネックを買った結果wにて中華ネックのフレットの金属が謎過ぎるという話をしたのだが、今回は我々調査団がコイツの謎を追ってみようと思う。
上の画像は、中華ネックから抜いた謎フレット(上)とJascarのフレット(下)を比べてみたものです。
もうね、色が全然違うという。
ギターのフレットとして使われる金属は基本的にニッケルシルバーとステンレスに絞られると思うが、
参照:https://www.premierguitar.com/understanding-frets-and-fret-wear
謎フレットはその見た目や硬度からしてそのどちらでもないようです。
ああ、気持ち悪いったらありゃしない。
ということで、中年探偵団の出番です。( ー`дー´)キリッ
本来、専用の測定器的なものを用いてチェックするのが筋なのであろうが、勿論そんなものはないので・・。
ステンレスではなかった
色的にはステンレスとも言えなくないのですが、どうなのか?
最近ギターに良く使われるようになったステンレスのフレットは、その硬度と耐久性に特徴がありますな。見た目もピカピカです。
フレットカッターもステンレス専用のものでないと歯がボロボロになるくらいである。
試しに安いステンレスのネジを手持ちのフレットカッター(ニッケルシルバー用)で切ってみると、
ねじの先っぽの部分ですから硬すぎて無理です。カッターの歯だけでなく手が死にます。アイタタ
では、例のフレットはどうかというと・・・
あっさりカットできた。
むしろJascarのニッケルシルバーフレットよりも粘りがなく、「パキン」と軽くカットできる印象である。
実際にステンレスフレットを切っている訳ではないのですが、比較するまでもないでしょう。。
ニッケルシルバーでもない
だとしたら、やっぱりニッケルシルバーなのかなあ?色が違うけどなあ・・・
ということでニッケルシルバーか否かを確かめる実験をしてみます。
まず、そもそもニッケルシルバーとは何か?というと、銅と亜鉛とニッケルからなる合金であり「洋白」なんて呼ばれています。
色はやや黄みがかった白で上品な雰囲気をもっていて、フルートとかサックスなどもで使われているんですなあ。
で、Jascarやその他のフレットは、銅:62%、ニッケル:18%、亜鉛:20%という配合の合金らしい(洋白であるか否かはちゃんと配合の比率で決まっており、その範囲内という訳です)。
銅の配合比率が大きいから銅の色味があるんですなあ。
まあ、Jascarの色を見た段階で、謎フレットは違うというのがわかるんだが、念の為実験してみます。
家庭でも手に入る酢酸をかけてみますた。
数時間放置してみると・・・・
バッキバキに錆びてしもうた。
はい、これはJascarのフレットです!!(左のやつ)
どうも銅の成分が反応しているっぽい。
んで、謎フレットですが・・・
まったく変わらねえ。
これでわかるのは、どうやらニッケルシルバーとして定義されている合金の範囲内ではなさそうということですな。銅が入ってないのか、それとも配合の比率が違うのか。
一体何だよこの謎金属は・・・?
謎が深まるなあ。
金属の正体についての考察
ステンレスでもなく、ニッケルシルバーでもなさそう、この金属の正体は何なんだろうなあと思うわけですが、決め手はないのだが、なんとなく亜鉛かアルミのようではあります(少なくても磁石にはつかなかったので非金属ではあるようだ)。
直接的にこの説を証明するのではないのだが、ちょっとおもしろいデータがあるんです。
商社の(株)ミヤタさんのデータによると銅の値段は亜鉛やアルミの2倍以上のようなのだ。
ということは、コストカットを目的として
- 合金の配合割合が変えられている
- まったく別の金属が使われている
というのはあり得る話だ。
例えば、銅:10%、ニッケル:18%、亜鉛:72%とかねw
だって、Jascarのフレットって我々一般消費者が買うと普通に1セット2,000円~3,000円とかするわけで、仕入れ値だと多分1,000円~1,500円になるわけじゃないっすか。
Jascarなんて有名どころではなくても、銅の価格が上がっている以上、フレットはそこそこのお値段にはなるでしょうな。
んで、例のフレットが載ったネックは、Aliexpressで6,500円(送料込み)ですよ。
ざっくり50%の3,250円で仕入れて販売されているとすると、そのうちフレットの材料費が占める割合は下手すると3分の1、4分の1!?その他の材料費や人件費を考えたらどうやって利益出すねん?みたいな感じになる訳です。
とすると、安い金属を使ったとにかく安いフレットを仕入れ、製造原価を限界まで下げているんじゃないか?という推測が成り立つ。
なんだか、地溝油(下水油)問題を思い起こさせるなあ。
他の製品から材料が流用されてるのかなあ
もう一つ、コストカットといえば、他のラインからの原材料流用もあり得るなと。
例えば安価なトレモロブリッジのブロックは亜鉛で作られているけど、ギターのパーツを作る工場はそれなりに色々な製品を製造しているのだろうから、フレット製造ラインに別ラインで使用している素材を流用しているっちゅう可能性もなきにしもあらずではないか?
だって、一括して大量に材料を仕入れればその分、単位あたりの仕入れ値を下げられる訳ですからね、製造原価を下げようとすれば、まああり得る話だと思う。
まとめ
まとめとしては、
- 金属の謎は謎のままであった
- 少なくても、ステンレスやニッケルシルバーではない
- もしかすると、価格が高い銅ではなく比較的安価な亜鉛を多く配合しているのかもしれない
- もしかすると、全く別の金属かもしれない
ということです。
こうしてみると、やはり中華の安ギターは要注意であるという結論になります。
いや勿論、
フレットが亜鉛だろうがアルミだろうが気にしないもんねー僕ちゃん、フレットが音に影響するなんて証明できるんか?オラ!?
という人がいてもいいし、とにかく安けりゃいいという話もあろう。
しかし、中国はギターの品質もかなり上がっているとはいえ、人件費もかなり高くなってきているし(既に都市部は中国の方がリッチでしょうな)、安くモノを製造するためにはどこかにしわ寄せがあるはずという予感は常に念頭にあったほうが良いと思う。
ほら、新疆ウイグル産の綿花問題もあるじゃないっすか。。
ということで、オイラは少なくてもリフレット前提で激安中華ギターと向き合っていこうかと思います。
結局買うんかい
最後に、ニッケルシルバーフレットって酸に弱そうな実験結果が出たんですが、レモンオイルとか大丈夫なの?余裕で使ってるけどw
コメントを残す